あなたの庭の木は?

2009年2月8日(日)
三吉信彦牧師

ヨハネの黙示録 22章1~5節

 天使はまた、神と小羊の玉座から流れ出て、水晶のように輝く命の水の川をわたしに見せた。川は、都の大通りの中央を流れ、その両岸には命の木があって、年に十二回実を結び、毎月実をみのらせる。そして、その木の葉は諸国の民の病を治す。もはや、呪われるものは何一つない。神と小羊の玉座が都にあって、神の僕たちは神を礼拝し、御顔を仰ぎ見る。彼らの額には、神の名が記されている。もはや、夜はなく、ともし火の光も太陽の光も要らない。神である主が僕たちを照らし、彼らは世々限りなく統治するからである。

  • あなたの家の庭には果樹がありますか? 私の子供の頃、大阪郊外の家の庭にはいちぢく、桃などの果樹が植わっていました。実に袋をかぶせて、実るのを待って食べた桃の味は格別でした。ところが兄のアトリエや引き取った祖母の部屋などの増築で、果樹は切られてしまいました。奈良の新興住宅に越した新築の庭は枯山水を模した観賞用の庭で、果樹はありませんでした。今は果物はスーパーで買うだけ。日本の果物は、果樹農家による品種改良で大型化、美味となった反面、流通上の理由で高値が維持されています。タイのコロニー(ハンセン病患者・回復者療養施設)では、たくさんの果物が自生して、値段も安く新鮮です。

  • 聖書全体の終章であるヨハネ黙示録22章には、終末に回復される神の都の幻が描かれています。それは、天地創造の記事にあるエデンの園の回復です。沃地文化の日本では、極楽のイメージは花鳥風月、妙なる音曲などの豊かさです。しかし、荒れ野に生きる遊牧民のパラダイスのイメージは、生きるに不可欠な泉と果樹、真にシンプルなオアシスなのです。特に果樹は、神の恵みのしるし。イスラエルに与えられた神の祝福は7つを数えます。その内の2つは大麦と小麦、残りは果樹でぶどう、いちじく、なつめやし、ザクロ、オリーブの5つ。これらの果樹は、滋養が豊富、命の維持に欠かせません。黙示録には「その木の葉は諸国の民の病を癒す」とあります。植物図鑑を調べると、それらの実はもちろん、葉や樹液、樹皮などは、すべて薬効に用いられるとあります。まさに「諸国民の病を癒す」のです。

  • 天地創造の物語では、食べることが許されなかった命の木と善悪の知識の木。しかしアダムとエバは、知識の木の実を食べてエデンの園を追われました。神は「命の木」を守るため、炎の剣を置かれたといいます。不老長寿を求めても決して得られない、それがエデンの東に住む私たちの悲哀です。しかし、禁断の木の実を食べて神のごとき知恵を得た人類は、その悲しみを自ら癒すべく「疑似エデンの園」を造ります。旧約聖書のコヘレトの言葉2章には、ソロモンのごとき知恵と富と権勢を手に入れた人物が、「大きな屋敷を構え、庭園や果樹園を数々作らせ・・・、池を幾つも乗らせ、木の茂る林に水を引かせた・・・男女の奴隷に加えて、歌い手をそろえ、多くの側女を置いた」とあります。しかし、この男は述懐します。「目に望ましく映るものは何一つ拒まず手に入れた。」「しかし・・・見よ、どれもむなしく、風を追うようなことであった」と。風を追うようなこと、風を捉えるようなむなしさ! この男とは、神のごとき知恵を持った私たち現代人です。住み心地のよい屋敷、枯山水の庭、そして大量生産、消費、見栄えの良い果物がスーパーに並んでいる。まさに疑似エデンの園ではないでしょうか。しかしその豊かさのただ中で、冷え冷えとしたむなしさという風が足下から吹き上がってくる。そうではないでしょうか?

  • 旧約聖書のエゼキエル書47章は、黙示録22章の下敷です。そこには「あらゆる果樹が大きく……その果実は食用となり、葉は薬用となる」とあります。あらゆる果樹とは、先の恵みの5つの果樹ですが、それを黙示録はあの創世記1章の「いのちの木」だというのです。あの回る炎の剣で守られた「いのちの木」は、エデンの東に住む私たちには永遠に食べられないはずです。でも、そういう悪の実ばかり結ぶこの現代社会という「庭」に、神は1本の木を植えられました。十字架という1本の木です。それは、エデンの東にあっては「呪い」のしるしでしたが、その木に架かられたお方によって「祝福」の木に変えられました。この木はまことに不思議な木です。


     「♪この木何の木/気になる木/見たこともない木ですから/見たこともない花が咲くでしょう……この木何の木/気になる木/皆が集まる木ですから/皆が集まる実が生るでしょう♪」(TBS「世界・不思議発見!」テーマソングより)
     のろいの木・十字架を実の生る「いのちの木」に変え、そこに「諸国民を集め、癒された」のは神の御子イエス・キリストでした。タイ語で「クン/ミー/ルーク/マイ?」は、「あなたには子がありますか?」という意味です。ルークは子、その原意は「実」です。
     あなたの庭には木がありますか? その木は実っていますか? あなたの心の庭には十字架という木が植わっていますか? 十字架の御言葉はあなたの心の庭で実を結んでいますか? あなたにはそれが感じられるでしょうか? クン/ミー/ルーク/ナイ(中)スワン(庭)チヴィット(心の)? あなたの心の庭には御言葉の実が生っていますか? アーメン